植田正治(鳥取県境港町出身、1913-2000)は、同時代の日本の写真家のなかで、最も傑出した写真家の一人と目されている。幼少の頃から写真への興味を見せ始め、以来、写真を軸に、一生をかけてその世界を追求するようになった。1933年、彼は故郷の町に写真館を開き、亡くなるまでこの写真館の営業を続けたが、より傾注したのは個人的な創作活動だった。同時に、写真コンテストへの出品、専門誌での作品発表、数え切れないほど多くのアマチュア写真家グループなどに関わった。
植田が故郷の鳥取から離れることは数えるほどだったが、折にふれて入手した海外の専門誌から、西洋アヴァンギャルドの革新的な写真を目にしており、技術的・審美的な実験手法に魅せられていた。第二次世界大戦の不毛な時代が過ぎると、植田は写真の仕事に舞い戻り、彼の最も著名な作品の数々を制作した。この中には、鳥取砂丘を舞台に、彼独特の感性で人物を演出した「砂丘シリーズ」も含まれる。これら、彼の作品の非日常的なイメージが繰り出す魅力や精巧さは、写真史の中でも比肩するものがない。
植田のこの芸術様式には、彼独特のユーモアのセンスや極めて特別な美的アプローチ、さらには日常の小さな物事に対する植田の旺盛な好奇心が、密接に関係していた。
この展覧会での写真作品は、すべてオリジナル・プリントであり、植田正治という稀有なアーティストの仕事を称えるために、彼の故郷に創設された「植田正治写真美術館」(鳥取県西伯郡伯耆町)から貸し出されているものである。
展覧会の構成内容をご紹介します。スライドショーで画像をご覧いただけます。
巡回先の会期と開催地の予定に関する情報です。予定は変更になる場合があります。
A4版の書式をダウンロードしてご利用いただけます。